タイガース軽視の新体制、発足?!

異例の時期のフロント改革でもあり、82年の球団史でも異例のフロント大改造だ。6日、大阪市福島区の電鉄本社で臨時取締役会を開き、12月1日付人事で四藤球団社長が退任し、阪神電鉄取締役で阪急阪神ビルマネジメント代表取締役・副社長執行役員の揚塩(あげしお)健治氏(57)が新球団社長に就任すると発表した。

編成トップの球団本部本部長に谷本修球団常務(53)が就任するなど、13年ぶりのリーグ優勝はもちろん、常勝軍団づくりへの本気度を示す“アゲアゲ新体制”を整えた。

通常は球団幹部の人事異動は1月1日付なのだが、なんと1カ月も前倒しにした人事異動。しかも、総勢10人に及ぶ変更も、球団の歴史をひも解いてみても前例のない大刷新だった。

今回の大がかりな人事は、営業面のさらなる強化が狙いとしてある。金本体制2年目の今季は2位に躍進し、7年ぶりの観客動員300万人を突破。本年度の球団の営業収入、収益は過去最高を記録する勢いだが、人口減少により鉄道収入は減っており、阪急阪神HD首脳からは、
「タイガースは、もう限界か」
と、増収増益の手立てを探るべしという声が出ていた。球団関係者は、
「来年4月に不動産部門を統合した中核会社が設立されることになっており、阪神側としては不動産事業経験者の四藤氏に白羽の矢がたった」
と説明する。

来春入社から新卒採用が阪急阪神ホールディングス(HD)に一括されるなど、阪急と、阪神はさらに統合を進める。新たに統合される不動産会社に異動する四藤球団社長の準備のために、本社人事が優先されたようだ。親会社の玉突き人事の意向で、タイガースの人事が左右されるのは昔からだが、今回はそれがより色濃く反映された形だ。

タイガース復権。新しい風を吹き込むために、かじ取りを任された揚塩新社長は、
「優勝、日本一…。そこはファンが求めているところなので、結果を求めて精一杯やりたい」
と、所信表明で力を込めた。
「金本監督の1年目が借金12、今季が貯金17ですから、実力がついてきたなというのは実感してます。ただ、圧倒的な力の差で勝つところまでは、発展途上なのかなと思っています。一、二軍監督としっかりと話し合い、チーム力アップに携わっていきたいです」

揚塩新社長は甲子園球場長として03、05年のリーグ優勝を見届け、球団の要職を歴任。“V請負人”として、タイガースの復権へ強い意気込みを語った。四藤球団社長が、
「非常に強い運をもった方でございます」
と、紹介。星野監督の03年、岡田監督の05年にリーグ優勝を遂げた際、揚塩氏は甲子園球場の球場長として、ネット裏本部席で両監督の胴上げを見届けている。阪神史上、球場長として甲子園で2度の優勝を経験したのは、14代球場長だった川口永吉氏と、揚塩氏の2人しかいない。

もちろん揚塩体制になっても、金本阪神を支える方針に変わりはない。編成面を谷本新本部長、嶌村副本部長の新体制にすることで、強い覚悟を示した。今回の人事で、谷本氏ら2人の電鉄執行役員が球団から新たに誕生し、本社との連携はより密になる。なにより本社の役員会に出席できる電鉄取締役の揚塩氏を社長として送り込んだところに、本気度がうかがえる。

それと、金本主導のチーム編成から、球団主導のチーム編成への大転換を狙ったものでもある。だから、チームの周辺からは、
「金本監督の意向ばかりが目立っていて、球団のビジョンや、リーダーシップがまったく見えない」
という声が、強く出ていた。今回の球団大刷新ではこうした流れを止め、球団主導のチーム編成を取り戻す-という狙いが隠されている。

その一般例が、金本監督と、掛布二軍監督の育成方針を巡る意見の対立をうまく調整できず、最終的には掛布二軍監督の退任でケリをつけた。
「金本監督と、掛布二軍監督の間に、フロントが入ってうまく調整すれば結論は違っていたはず。球団本部制が機能していなかった」
とはチーム関係者の言葉でもある。

来春4月1日には、前にもいったとおり、阪急阪神HDが人事面でも本格的に統合。タイガースがモタモタしているならば、もう阪急側も黙ってはいないはず。来季こそ、13年ぶりのリーグ優勝。阪急首脳が見つめるなかで船出した新体制は、視点を変えると、阪神電鉄本社が今後も、球団経営でイニシアチブを握れるかどうかの「背水の陣」ともいえなくはないのだ。

参考;「サンケイスポーツ」